痴漢について弁護士に早期に依頼するメリット
1 事件はどんどん進んでいって戻らない
痴漢事件では、まずは警察段階となり、事件が警察から検察に送致(送検)された後は検察段階、検察から裁判所に起訴された後は裁判所の段階となります。
送検後に事件が警察段階に戻ることは、ないです。
起訴後に事件が検察段階に戻ることも、ないです。
以前、起訴された後に、「不起訴にしてほしい。」とご相談に来られた方がいらっしゃいましたが、起訴後の段階では、基本的に、不起訴になるためのお力添えはできかねます。
起訴前に、不起訴にしてほしいというご相談であれば、不起訴になるためのアドバイスをし、不起訴になる方向に傾く資料(謝罪文、身元引受書、示談書、医療機関の領収書等。)をご提出いただき、検察に不起訴意見書を提出することができます。
2 検察は示談成立まで処分を待ってくれるとは限らない
痴漢事件には、被害者がいます。
痴漢事件の弁護人の主な仕事は、被害者との示談交渉です。
示談交渉には、時間がかかります。
痴漢の自白事件で、検察の取調べが終わった段階で相談に来られても、示談が、起訴・不起訴の処分の前に、成立するかはお約束できかねます。
なぜなら、痴漢の自白事件で検察の取調べが終わっていたら、いつ起訴・不起訴の処分がされてもおかしくないからです。
弁護人であれば、検察に「示談交渉中なので、起訴・不起訴の処分は待っていただけませんか。」とお願いできます。
大抵、ある程度は待ってくれます。
しかし、検察も、いつまでも待ってはくれません。
起訴されたら、不起訴には基本的になりません。
公判で示談書を証拠として提出し得るので、刑罰は軽くなり得ますが、起訴された段階で、起訴が公判請求でも略式請求でも、前科が付きます。
3 示談の具体的な流れ
弁護人が警察・検察に被害者の連絡先を聞き、警察・検察が被害者に弁護人に連絡先を教えてよいか確認し、了承を得られれば、警察・検察から弁護人に被害者の連絡先が伝えられます。
その後、弁護人から被害者に連絡しますが、いきなり金額等の条件について折り合いが付くことはなく、多くの場合、考えさせてほしいと回答され、被害者は周りに相談したり、ネットで相場を調べたりします。
その上で、例えば、最初は弁護人の提示が50万円に対し、被害者の回答が100万、次は、弁護人が75万を提示し、被害者の回答が90万円、さらに、弁護人が80万を提示し、被害者の回答が85万円、というように、だんだんと両者の主張する額が近づいていき、一致したところで金額については示談成立です。
痴漢の場合、金額意外にも、電車利用禁止等の条件の点で、車通勤に変えるために運転免許を取得し、車を購入し、教習所と車の領収書写しを被害者に提出するとか、時間がかかることもあります。
示談交渉は、相手がいることなので、どれだけ時間がかかるかすら読めません。
示談交渉中にも、事件自体は、警察から検察、検察から裁判所へとどんどん進んでいきます。
逆に、警察での最初の取調べの前の段階で相談に来られた場合、検察が起訴・不起訴の処分をするまで、捜査がスムーズに進んでも、1か月くらいは時間の余裕があります。
つまり、1か月くらいは示談交渉する時間的余裕があります。
このように、痴漢について弁護士に早期に依頼するメリットは、弁護活動、特に、示談交渉に時間をかけられることが挙げられます。