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弁護士法人心 千葉法律事務所

法定相続分と遺留分の違い

  • 文責:所長 弁護士 白方太郎
  • 最終更新日:2024年3月19日

1 法定相続分と遺留分はまったく別のものです

法定相続分と遺留分は、どちらも相続に関連する相続人の権利を表す言葉ですが、法律上はまったくの別物です。

具体的には、権利を有している人の範囲や権利の割合、用いられる場面、計算の際に含まれる財産等の範囲、権利を行使できる期間が異なります。

以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 権利を有している人の範囲や割合

⑴ 権利を有している人の範囲

法定相続分を持っていると認められるのは、配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹(およびその代襲相続人)です。

配偶者は必ず相続人になるので、法定相続分が認められます。

直系卑属、直系卑属、兄弟姉妹(およびその代襲相続人)については、この順に相続人になります。

先順位の相続人が存在する場合には、後順位の方は相続人にはならず、法定相続分も認められません。

これに対して、遺留分が認められるのは、配偶者、直系卑属、直系尊属のみです。

兄弟姉妹には遺留分は認められないことに注意が必要です。

直系尊属は、直系卑属がいない場合に遺留分権利者となります。

⑵ 権利の割合

法定相続分の割合は、配偶者がいる場合とそうでない場合とで計算の仕方が異なります。

まず、配偶者がいない場合には、同順位の相続人で均等に配分します。

例えば、相続人が子2人のみであれば、法定相続割合はそれぞれ2分の1です。

ただし、代襲相続が発生している場合は、被代襲者の法定相続分を、さらに代襲相続人の人数で割ったものが法定相続分になります。

相続人が配偶者と子の場合、配偶者の法定相続分の割合は2分の1、子の法定相続分の割合は2分の1です。

子が複数人いる場合には、2分の1をさらにこの人数で割ります。

相続人が配偶者と直系尊属の場合、配偶者の法定相続分の割合は3分の2、直系尊属の法定相続分の割合は2分の1です。

直系尊属が複数人いる場合には、3分の1をさらにこの人数で割ります。

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分の割合は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分の割合は4分の1です。

兄弟姉妹が複数人いる場合には、4分の1をさらにこの人数で割ります。

遺留分は、遺留分権利者が直系尊属のみの場合には全体で3分の1、それ以外の場合には全体で2分の1です。

各遺留分権利者が持つ遺留分の割合は、全体の遺留分の割合を法定相続割合で分けて計算します。

例えば、遺留分権利者が配偶者と子2人である場合、配偶者が4分の1、子がそれぞれ8分の1となります。

遺留分の割合の計算方法については、こちらもご参照ください。

3 用いられる場面

法定相続分は、遺言がなく、遺産分割協議を行う場合に用いられます。

相続人間で合意ができれば、必ずしも法定相続分の割合で遺産分割をしなくても問題ありません。

実務においては、相続人が高齢の配偶者と子である場合、配偶者の生活維持のために配偶者がすべての相続財産を取得するという内容の遺産分割をすることもあります。

これに対し、遺留分は、遺留分の侵害が発生するような遺言や贈与が存在している場合に用いられます。

具体的には、遺留分権利者が、遺留分を侵害している者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することになります。

4 計算の際に含まれる財産等の範囲

法定相続分の割合で分割する財産は、基本的には被相続人の財産および債務です。

代表的なものとしては、現金、預貯金、不動産、有価証券、自動車、借入金や未払金が挙げられます。

これに対し、遺留分の基礎となる財産は、被相続人の財産に、相続開始前1年以内に行われた贈与(被相続人と受贈者が遺留分を侵害することを知ってした生前贈与については期間の制限はありません)、相続開始前10年以内に行われた相続人への特別受益にあたる生前贈与を足し、相続債務を控除したものとなります。

5 権利を行使できる期間

法定相続分の割合で遺産分割を行う場合には、特に期間の制限はありません。

ただし、特別受益と寄与分については、原則として相続開始後10年を経過すると主張できなくなることには注意が必要です。

これに対し、遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分が侵害されていることを知ってから1年間で時効により消滅します。

そのため、消滅時効が完成する前に、内容証明郵便などによって遺留分侵害額請求の意思表示をする必要があります。

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