相続放棄をするときに気をつけるべきポイントはなんですか?
1 誰が相続人になるか
⑴ 代襲相続と相続放棄
例えば、Aに子Bがいて、Bにも子C(Aから見ると孫)がいる場合、Aが死亡する前にBが死亡すると、CはAの相続人になります。
これを代襲相続といいます。
しかし、Aが死亡した時点でBが存命の場合、Bが相続放棄をしたとしても、Cは相続人にはなりません。
⑵ 相続放棄と相続人
⑴の事例で、Aに父甲と母乙がおり、甲の母である丙(Aから見ると祖母)と乙の父である丁(Aから見ると祖父)が存命の場合について考えてみます。
Aが死亡して子のBが相続放棄をすると、Aに他の子(実子のほか養子も含みます)がいなければ第1順位の相続人はいなくなりますので、第2順位の相続人である甲と乙が相続人になります。
第2順位の相続人は被相続人の直系尊属ですが、親等が近い者から相続人になりますので、まず甲と乙が相続人になります。
ここで甲と乙が相続放棄をした場合、甲と乙の次にAと親等の近い直系尊属、つまりAの祖母である丙と祖父である丁が相続人になります。
丙と丁も相続放棄すると、Aの直系尊属は全員相続人ではなくなりますので、第3順位であるAの兄弟姉妹が相続人になります。
この点については、専門家でも、甲と乙が相続放棄をしたらAの兄弟姉妹が相続人になると誤解している場合がありますので、注意が必要です。
2 相続放棄をした者の保存義務
相続放棄した財産の保存義務について、例を挙げて説明します。
Aさんは、死亡したBの唯一の相続人です。
Bは、不動産は所有していなかったものの、車を2台所有していました(2台あわせて時価100万円程度で、Bの死亡後車の鍵はAが保管しているとします)。
また、クレジットカードの残高が50万円残っていることが判明しました。
ここでAさんは、Bさんには他にも負債があるのではないかと思い、弁護士に相談することなく、急いで家庭裁判所へ行き、相続放棄の手続きをしてしまいました。
しかし、民法940条において「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と定められています。
つまり、Aさんは、Bさんの車2台について保存義務を負い、保管に必要な費用等を負担しなければならない可能性があります。
この保存義務を免れるには、相続財産清算人選任の申立てをしなければなりませんので、その費用が必要になります(参考リンク:裁判所・相続財産清算人の選任)。
もしもAさんが弁護士に相談していれば、弁護士は、まず信用情報機関から信用情報を取り寄せ、クレジットカードや消費者金融に負債があるかどうか調査することをアドバイスしたでしょう。
Bさんの通帳のお金の動きを見れば、信用情報からは分からない負債についてもある程度分かります。
例えば、定期的に特定個人への振り込みがある場合等は、借金の返済である可能性があります。
調査の結果、負債がそれほどなく、相続財産清算人を選任するよりも相続した方が有利な場合、弁護士はAさんに対して、相続人として車の処分や負債の返済を行うほうがよいとアドバイスしたでしょう。
相続放棄をお考えの場合には、弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。
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